※この話はAIによる創作怪談で、全てフィクションです。
女子大生の美咲は、春からのひとり暮らしに少しずつ慣れはじめていた。
築年数は古いが、家賃が安く、大学からも近い。四畳半にユニットバス、狭くても自分の城だと思えば、不満はなかった。
その夜は特に疲れていた。レポートを書き終えたあと、スマホをいじりながら布団に入った。時刻は1時過ぎ。雨の音が窓を打っていて、それが子守唄のように心地よかった。
……眠ったと思ったのは、たぶんほんの数分後。
急に、体が重くなった。腕も足も動かせない。呼吸だけはできるけれど、指一本さえピクリとも動かない。
(え? なにこれ……金縛り?)
初めての経験だった。怖いというより、どうしていいかわからず、ただ心臓の音だけが耳に響いていた。
そのとき――気づいた。
部屋の空気が、妙に冷たい。暖房はつけたままだったのに、まるで窓を開け放ったようにスーッと冷える。
(早く、解けて……)
心の中でそう叫んだが、体は動かない。目だけは、うっすら開けられた。
そして、見てしまった。
天井のすみ――暗い部屋の角に、何かがいた。
最初はただの影かと思った。でも違う。
それは“人”の形をしていた。長い髪が顔を隠し、白い服のようなものを着ている。
壁に張りつくようにして、こちらをじっと見下ろしていた。
(見えてる……? 私のこと、見てるの?)
その瞬間、“それ”がゆっくりと首をかしげた。まるで、「気づいた?」とでも言いたげに。
喉の奥がかすかに震えた。叫びたくても声が出ない。目を閉じたくても閉じられない。
体中から汗が噴き出しているのに、手足は氷のように冷たかった。
やがて、“それ”はスルリと壁から降りてきた。
音もなく、床に足をつけず、空中をすべるように。
そして――布団のわきに立った。
顔は、まだ見えない。
でも、わかる。そこにいる。すぐそばに。息がかかるほどの距離で、じっと……見ている。
(やだ、やだやだやだ――)
声にならない悲鳴を上げた瞬間、金縛りが解けた。
弾かれるように跳ね起き、部屋の電気をつけた。
何もいなかった。影も、気配も、全部消えていた。
ただ、部屋の隅のフローリングに、水滴のような跡がひとつ、ぽつんと残っていた。
次の日、母に電話でそのことを話すと、妙に静かにこう言われた。
「……あんた、引っ越すとき、お仏壇に挨拶してった?」
そういえば、美咲が借りたこの部屋、元は誰かのお婆さんが住んでいたと聞いていた。
亡くなって、すぐに空き家になったらしい。
それ以来、美咲は毎晩、眠る前に部屋のすみを確認している。
電気を消して、目を閉じるまでのわずかな時間が――今でも、一番、怖い。